腰部脊柱管狭窄症とマッサージ
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、脊柱管(せきちゅうかん)と呼ばれる脊椎(せきつい)の中にある神経組織が圧迫される病態を指します。
脊椎(せきつい)は、いわゆる背骨です。椎骨(ついたい)と呼ばれる骨が積み重なって連なってできています。
1つ1つの椎骨には椎孔(ついこう)と言われる穴が空いており、1本の管のようになっています。
これを脊柱管(せきちゅうかん)といい、その中には脊髄(せきずい)と言われる神経の束と、それに続く馬尾(ばび)神経が入っています。
脊柱管は脊椎骨と脊髄からなり、神経が通る重要な通路なのですが、脊柱管狭窄症では、脊柱管内のスペースが狭くなり、神経や脊髄に圧力がかかるため、神経の機能に影響を及ぼし脊柱管狭窄症となります。
脊柱管狭窄症は、加齢性の変化で、老化などの影響で椎間板や腰椎が変形・変性して、靭帯の緩みなどが起因して起こります。
一般的に、腰椎椎間板ヘルニアは若い世代に多く、腰部脊柱管狭窄症は40歳以上の中高年が発症しやすいとされています。
どんな症状出るの?
症状は脊柱管が狭まる場所や圧迫の程度によって異なります。
足の痺れ
お尻から太ももの裏、ふくらはぎや足にかけて痛みやしびれ、重だるさを訴えることが非常に多い病気です。
また、足のもつれなども生じます。
背筋を伸ばして立ったり歩いたりすると、脊柱管が狭まり、馬尾神経がさらに圧迫されるため、200〜300m歩いただけでもこのような症状が出るので、長い距離を続けて歩くのが困難になります。
間歇跛行(かんけつはこう)
神経および神経周辺の血管も圧迫されるため、脊柱管内で上下の自由移動ができず、数百m、数十m歩くと痛みやしびれで立ち止まり、休憩しなければ歩けなくなります。
しかし、しばらく前かがみになって休むと、症状が治まり、また歩けるようになるのが特徴です。
このように歩行と休息を繰り返す状態を、「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」といいます。
この間歇性跛行は、腰部脊柱管狭窄症の大きな特徴です。
特に、朝や寒い季節に症状が出やすいという特徴もあります。
感覚鈍化(かんかくどんか)
足のしびれに伴って、触られた感覚が鈍ったり、皮1枚被っているような感覚など、感覚の鈍化が生じいる場合があります。
排尿・排便障害(はいにょう・はいべんしょうがい)
腰部脊柱管狭窄症が進行すると、仰向けになっても足のしびれが起こって、からだを横にして背中を丸めないと眠れなくなるほか、排尿・排便障害を起こすこともあります。
おしっこが出にくいとか、うんちが出にくいとかですね。
この症状は、馬尾神経が圧迫されて起こる症状です。
治療法は?
画像検査の結果や症状の強さによって異なりますが、まずは保存療法が検討されます。
保存療法とは手術以外の方法です。
痛み止めや血液の循環を良くする薬、ブロック注射、リハビリなどによって症状の緩和を図ります。
ブロック注射
主に、仙骨ブロック注射と呼ばれる注射をすることが多いです。
お尻の骨である尾骨(びこつ)付近から注射をして、脊柱管内に薬液を流します。
薬液の効果で痛みの信号をブロックすることからブロック注射と呼ばれています。
その仙骨ブロック注射を定期的に行い、神経周辺を滑りやすくしてやると、歩行距離が延び坐骨神経痛も緩和していきます。
ただ、痛みを抑える効果は永続的ではありません。
しかし、神経の癒着(ゆちゃく)をはがしたり、痛みを引き起こす物質を洗い流すことができることから、大幅な改善がみられることもあります。
1度では効果が見られなくても、複数回行うのが一般的です。
薬による治療
ロキソニンやボルタレン、バファリン、カロナールといった一般的な鎮痛薬の他、リリカやサインバルタといった神経の薬、オパルモンなどの血流を改善する薬、痛みに効果がある抗うつ薬などが有効であると言われています。
手術
繰り返しのブロック注射でも痛みが治まらない場合は、手術が検討されます。
保存療法で効果が見られない場合や、症状が強く生活に大きな支障が出ている場合、足が動きにくかったり、おしっこが出にくかったりなどの症状がある場合には手術療法の可能性が大きくなります。
やってはいけないこと
脊柱管狭窄症では、腰を反らす動作はNGです。
腰を反ると、構造的に脊柱管が狭くなってしまい、症状を悪化させる可能性があるからです。
「良い姿勢でいなければ…」と無理に背筋を伸ばしたり、胸を張りすぎたり、背筋を鍛えようと身体を反らす運動を繰り返したりすることはしてはいけません。
また、筋力が落ちるからと症状を我慢して無理にウォーキングをしたりするのもやめましょう。
通常、歩くことは筋力の強化に役立つとして推奨されますが、この病気の場合は症状を悪化させる可能性があります。
やったほうがいいこと
脊柱管狭窄症では、腰を反る動きはNGですが、逆に丸める方向はOKです。
仰向けで両膝を抱え込んで背中を丸めるストレッチや、足を伸ばして太ももの裏を伸ばしたり、お尻を伸ばしたりするストレッチは有効です。
脊柱管を拡げ、腰回りの筋肉を伸ばす効果があります。
しかし、また難しいところなのですが、椎間板ヘルニアの有無などによって症状の出方は異なるため、ストレッチや運動などで症状が出る場合は無理に行わないようにしましょう。
そしてまた難しいところですが、腰をそらさない方が良いとは言え、丸めてばかりいるのも筋肉が硬くなってしまったりするデメリットがあるため、うつ伏せで腕を枕にして寝転がるなどの姿勢を2~3分取ることで、わずかに腰を反らす時間を作ると良いです。
そしてまたまた、無理なウォーキングがNGとはいえ、症状が悪化しない範囲でウォーキングをしたり、自転車を漕ぐなどの症状が出にくい運動を行うことで、体力や足腰の筋力を落とさないようにすることも大切です。
症状を見ながらということになりますね。
脊柱管狭窄症とマッサージ
脊柱管狭窄症を抱える方は、マッサージもおすすめです。
マッサージをすることで、脊柱にかかる負担が減るからです。
脊柱にかかる負担が減ると、神経症状が減ります。
また、鍼灸治療も効果的です。
鍼灸には神経の鎮静効果があるので、神経が高ぶってシビレや痛みを出している状態を抑えてくれる働きがあります。
まとめ
脊柱管狭窄症は、痛みやシビレや間歇跛行(かんけつはこう)、そして排尿障害と日常生活に大きな支障をきたします。
治療法はいくつかありますが、私個人としては、手術は極力避けることをお勧めします。
手術をしても、シビレが残っている方や、逆にシビレがひどくなった方を見てきました。
ですので、できるだけ保存療法をお勧めします。