脊髄小脳変性症と訪問マッサージ
こんにちは。福岡県太宰府市を中心に筑紫野市・大野城市・春日市で訪問鍼灸マッサージをしている、たがみ訪問鍼灸マッサージの田上です。
今回は、訪問マッサージをご利用される患者様の症状の中で全く多くはないのですが、きっと需要があるだろうなと思う脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)についてお話ししていきます。
私も今現在、訪問マッサージに伺っている患者様の中に、この脊髄小脳変性症の症状をお持ちの方がいらっしゃいます。
目次を作っていますので、読みたい項目まで飛んでください。
それではお話ししていきます。
脊髄小脳変性症とは?
脊髄小脳変性症は、主に小脳の神経細胞が徐々に失われることで、ふらつき、ろれつが回らない、手の震えなどの運動をスムーズにできない「運動失調」が起きる病気の総称です。
小脳だけでなく、脳幹や脊髄にも異常が広がるため、こう呼ばれています。
原因が特定できない「孤発性」と、遺伝による「遺伝性」に大別され、原因や進行の度合いは病型によって異なります。
脊髄小脳変性症の症状
脊髄小脳変性症の主な症状は、以下の通りです。
運動失調
運動失調(うんどうしっちょう)とは、筋力は十分あるのに、体の動きが不器用になる状態です。
歩行障害
歩行障害(ほこうしょうがい)では、歩く時にふらつき、バランスがとりにくくなる酩酊歩行(めいていほこう)が見られます。
構音障害
構音障害(こうおんしょうがい)とは、舌がもつれて言葉が話しにくくなる症状です。
手指の運動失調
手足の運動失調では、書字やボタンかけ、箸などが使いにくくなる症状が出ます。
嚥下障害
嚥下障害(えんげしょうがい)とは、飲んだり食べたりする時に物を飲み込みにくくなる症状です。
排尿・排便障害
排尿・排便障害(はいにょう・はいべんしょうがい)とは、おしっこやうんちのコントロールが難しくなる症状です。
しびれや感覚の鈍さ
末梢神経(まっしょうしんけい)の障害(しょうがい)によるもので、しびれや感覚が鈍くなったりします。
痙性
痙性(けいせい)とは、足などが突っ張って歩きにくくなる症状です。
遺伝性痙性対麻痺(いでんせいけいせいついまひ)など一部の病型で現れます。
不随意運動
不随意運動(ふずいいうんどう)とは、意図しない体の動きが起こることです。
自分で動かしていないのに、勝手に動くというような症状です。
その他
病型によっては、運動失調症状以外にも以下のような症状が現れることがあります。
脊髄小脳変性症の原因
脊髄小脳変性症の主な原因は、遺伝性と遺伝性ではない孤発性(こはつせい)に分けられます。
遺伝性では、原因遺伝子の異常が原因で、多量のグルタミンタンパク質が神経細胞に蓄積することが有力とされています。
孤発性の多くは原因が不明で、多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)が大部分を占めます。
多系統萎縮症は、脳や脊髄の神経細胞が進行性に変性・脱落する難病です。
かつては小脳失調型(OPCA)、パーキンソン症状を主とする大脳基底核型(SND)、自律神経障害を主とするシャイ・ドレーガー症候群(SDS)に分類されていましたが、進行すると症状が重複するため、これらをまとめて「多系統萎縮症」と総称するようになりました。
遺伝性はなく、進行が速く、発症から平均9年程度の余命とされています。
遺伝性
親から子への遺伝
多くは優性遺伝で、親が原因遺伝子を持つと子供に半分の確率で伝わります。
CAGリピート病
原因遺伝子の特定の塩基配列(CAG)が異常に繰り返されることで、異常なポリグルタミンタンパク質が作られ、神経細胞を障害する。
遺伝子の特定の「CAG」という塩基配列が異常に繰り返されることによって発症する神経疾患群の総称です。代表的なものにハンチントン病や脊髄小脳変性症があり、リピートの数が増えるほど症状が重くなり、世代を経るごとに発症年齢が若くなり重症化する「表現促進現象」いう特徴があります。
孤発性(非遺伝性)
進行性神経変性
原因がはっきりしないまま、徐々に神経細胞が障害され、小脳などが萎縮していきます。
原因不明
多くのケースで、明確な原因が特定されていません。
多系統萎縮症
孤発性の脊髄小脳変性症の多くが多系統萎縮症です。
その他
脊髄小脳変性症は、これらの原因とは別に、血管障害、腫瘍、中毒、感染症などが原因となる場合もあります。
現時点では完全に解明されておらず、研究が進められています。
脊髄小脳変性症の治療
脊髄小脳変性症(SCD)の根本的な治療法は未確立ですが、薬物療法で症状を和らげ、リハビリテーションで機能維持を図り、生活の質(QOL)を保つことがとても重要です。
運動失調にはTRH誘導体薬、パーキンソン症状にはL-ドパ、排泄障害には便秘薬など、症状に応じた薬剤が使われます。
また、将来的な治療法として遺伝子治療や再生医療の研究が進められており、呼吸・栄養管理、福祉制度の活用も行われます。
薬物療法
運動失調
運動失調には、TRH誘導体のタルチレリン(セレジスト®︎)やプロチレリン(ヒルトニン®︎)が使われます。
パーキンソン症状
パーキンソン症状には、L-ドパなどの抗パーキンソン病薬が用いられます。
自律神経障害
低血圧などの自律神経障害には、昇圧剤(ミドドリン、ドロキシドパ)が、排尿障害などの自律神経症状には抗コリン薬が使用されることがあります。
その他
めまいや痙攣など、他の症状にも適宜薬が処方されます。
リハビリテーション
運動機能の維持・向上と、転倒予防を目的とします。
歩行、立ち上がり訓練を行う理学療法、日常生活動作の訓練を行う作業療法、飲み込み、発話の訓練を行う言語聴覚療法などがあります。
バランス訓練や歩行訓練を集中的に行うことで、効果が長期間持続する可能性もあります。
呼吸・栄養管理
症状によって呼吸が困難になる場合や、飲み込む機能(嚥下機能)が低下して誤嚥(ごえん)するリスクが高まる場合、呼吸器や胃ろうによるケア、栄養管理が行われます。
生活上のケアと福祉制度の活用
転倒防止のための手すりの設置などの住環境の整備。
厚生労働省の指定する特定疾患(難病)であるため、医療費助成制度の対象となることがあります。
介護保険サービスなどを活用し、生活の質を維持・向上させることがとても重要です。
脊髄小脳変性症とマッサージ
脊髄小脳変性症とマッサージについては、残念ながら根本的な治療ということには繋がりません。
しかし、生活の質の維持・向上にはとても親和性があると考えます。
進行性で運動失調の症状が出ることから、身体をコントロールしようとして、力を入れないでいいところも力を入れようとしますので、筋肉が疲れやすいです。
ですので、マッサージで筋肉の疲労を減らしたり、回復を早めることで日々の生活をしやすくすることが期待できます。
また、リハビリを行うことでも身体に疲労が溜まりますので、これも先ほどと同様、マッサージで筋肉の疲労を減らしたり、回復を早めることで日々の生活をしやすくすることが期待できます。
それが結果的にリハビリの強度にも耐えれることに繋がり、リハビリの効果を増すことに繋がるかもしれません。
痙性の症状では、筋肉がつっぱりますので、関節が固まってしまいがちなので、そこをマッサージでほぐすことで動きやすくなります。
まとめ
脊髄小脳変性症は進行性の難病指定疾患で、今の所、根本的な治療法は確立されていません。
ですので、生活の質の維持と向上に目を向けることが重要です。
投薬、リハビリ、介護、マッサージ、時にはメンタルケアなども含めて、各医療機関が連携を図って、チームで対応することが重要だと考えます。
この疾患になられた方は、ご自分の身体が思うように動かなくなる恐怖と、苛立ちを抱えられることでしょう。
やるせない気持ちにもなるでしょう。
だから、チーム全体で診る必要がある疾患です。
今後、劇的な治療法が研究・発表されることを願います。
それではまた。